隼 霧の日光

「午後には陽も差すでしょう」の予報に、久しぶりにV-Maxを引っ張り出す。
 チョークを引いてエンジンを…とっとっと、セルの回りが弱いぞ?
 先日のスイッチ入れ替えの際、接続の確認にヘッドライトを付けたり消したりしたのが原因だろうか?バッテリーがヨワヨワになっている風である。
 「そんなに電気使ったかな?後でバッテリー周りをチェックしてやるか」
 V魔はガレージへ戻してとりあえず充電開始。
 代わりに隼を引っ張り出して…「んじゃ”皮むき”でもしてくるか」
 これまた先日入れ替えたばかりのリアタイヤ
 入替後200km近く走ったので馴染みは完璧だが(直線ばかりだったので)タイヤサイドはまったく使えていない。
 一度日光へ持っていって一通り使えるようにしておこう。
 久しぶりの日光は寒かった。
 気温を考慮して皮ジャンを着てきたのだがそれでも寒い。
 新品のメッシュジャケットなんぞ着てきたら寒くて走れない事だっただろう。
 交通量はそこそこ、どぉれといろは坂を上りだす。
 コーナー2つ程をゆるゆる回ったところで、後ろから(NISSAN)180SXが追いついてくる。
 どれどれと道を譲って後ろから観察。
 うん、そんなに下手な腕ではなさそう、マナーも悪くないのでこのまま後ろを付いていっても大丈夫だろう。
 こちらの意図を察したのか、180のペースも上がる。ラインを半分外して追ってみる。
 もちろんブレーキングと突っ込みは4輪には到底敵わない。
 同じ速度で突っ込むととんでもないことになるので、俺ははるか手前でブレーキング。コーナーもゆっくり回って加速勝負で追いつき……ぃぃぃぃぃっ!
 立ち上がりでちょいとスロットルを多めに開けたら、リアがずるりと横を向く。
 それはもう、思わずフロントに逆ハンを当てた程である。「うわっ、やっちまった!」
 
 単なる幸運だが、スライドはそこで止まってくれた。
 嫌な汗がぶわっと吹き出る。「だからタイヤサイドはまだ新品なんだって…」
 離れていく180を見送りながらペースを落とす。
 あ~怖かった。いつもの事ですがご先祖様ありがとう(合掌)
 霧に煙る中禅寺湖畔から半月山へと登り、頂上での一服はいつものとおり。
 寄り道しながらぐるりと回って山を降りる。
 確認したリヤタイヤはきれいに一皮(以上?)剥けていた。
 よし、このまま帰るのはもったいないから、足尾から粕尾峠へでも抜けてみるか…
 
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