あえて今考える

 「バイクは危ない」「危険な乗り物だ」
 バイクに乗っていれば誰しも聞いたことのある言葉だろう。「何を今更」と食傷気味の人も多いはずだ。
 しかし、とある現実を突きつけられた時、改めて思い知らされる言葉でもある。
 3、4回ツーリングにご一緒したことがある人がバイク事故で亡くなったと聞いたのは少し前の話である。
 その時、何よりも一番先に感じたのは驚きだった。
 バイクに乗るのがとても上手な人だったからだ。
 年齢は俺より上だったが、かつて業界にいた事もあり、峠で本気を出されるとまったく付いていく事が出来なかった。
 一度無理をして後を走った時など「ああ、俺がこのペースだと事故るな…」と思い、途中で引いた事さえあった。
 もちろん、「上手い」と「速い」は同意義ではないが、その人は両方を満たしていた。
 亡くなった事故の現場は、「なんであんなに上手い人がこんなところで…」というほどありきたりな場所だったそうだ。
 「上手いからと言って事故に遭わないわけではない。」
 「どんな装備をしていても運が悪ければ命が無くなる。」
 「そんな事はわかっている。」と流してしまうことは簡単だ。
 「覚悟の上さ。」と開き直ることも簡単だ。
 しかし、いざ現実として突きつけられると、「死」というもののあまりのあっけなさに驚かされてしまうものだ。
 単なる怪我やバイクの大破だけなら、後に「あの時馬鹿やっちゃってさぁ…」と笑い飛ばすことができる。
 しかし、死んでしまったら「後」はない。
 「死」を意識する遊びというのはバイクに限った話ではない。
 四輪
 スキー
 ダイビング
 登山
 etcetc…
 しかし、中でも「二輪」がより死に近い遊びであることは間違いないだろう。
 俺の知人・友人で、これまでバイク事故で亡くなったのは既に4人。
 これから先、もうこの手の話は聞きたくない。

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